「歯並びと睡眠って関係あるんですか?」
矯正相談の中で、ときどきこのような質問を受けます。歯並びは“見た目”の問題と思われがちですが、実は呼吸や舌の位置、顎の発育と深く関係しています。そしてそれらは、睡眠の質にも影響を及ぼす可能性があります。
今回は、歯並びと睡眠の質の関係について、矯正歯科の視点から整理してみます
睡眠の質を左右する「呼吸」
私たちは睡眠中も呼吸を続けています。当然ですが、呼吸が安定していることが良い睡眠の前提条件です。
理想的なのは鼻呼吸です。しかし歯並びや顎の発育に問題があると、舌の位置が下がりやすくなり、結果として口呼吸になりやすいことがあります。
口呼吸になると、
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喉が乾燥する
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気道が狭くなりやすい
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いびきをかきやすい
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浅い睡眠になりやすい
といった影響が出ることがあります。
顎の大きさと気道の関係
歯並びが悪い背景には、「顎の大きさと歯のサイズのアンバランス」が存在することが少なくありません。
特に、
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下顎が小さい
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上顎が狭い
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出っ歯(上顎前突)
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受け口(下顎前突)
といった骨格的特徴は、舌のスペースや気道の広さに関係します。
顎が小さいと、舌が収まるスペースも小さくなります。すると舌が後方へ落ち込みやすくなり、気道を狭くする可能性があります。
この延長線上にある疾患として知られているのが
睡眠時無呼吸症候群 です。
※矯正治療がこの疾患を直接治療するわけではありませんが、顎や歯列と気道の関係は医学的にも研究が進んでいます。
子どもの歯並びと睡眠

近年注目されているのが、子どもの口呼吸と歯並びの関係です。
口呼吸が習慣化すると、
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上顎の成長が横方向に広がりにくい
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歯列が狭くなる
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出っ歯傾向になる
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開咬になりやすい
といった影響が出ることがあります。
また、睡眠中にいびきをかく子どもは、熟睡できていない可能性もあります。睡眠の質が低下すると、
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日中の集中力低下
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落ち着きのなさ
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朝起きづらい
といった形で現れることもあります。
もちろん原因は一つではありませんが、「歯並び=単なる見た目」ではないことは理解しておく価値があります。
大人の歯並びと睡眠
大人の場合も、歯並びや噛み合わせが呼吸に影響する可能性があります。
例えば、
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奥歯がしっかり噛めない
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噛み合わせが不安定
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顎が後退している
といった場合、舌の位置が下がりやすくなります。
また、歯ぎしりや食いしばりは睡眠中に起きることが多く、睡眠の質と無関係ではありません。気道の狭さと関連しているケースも報告されています。
矯正治療で睡眠は良くなるのか?
ここは慎重にお伝えすべきポイントです。
矯正治療の主目的は、
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咬合の改善
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歯列の整列
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口腔機能の正常化
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審美性の向上
です。
睡眠を直接治療するものではありません。
しかし、
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上顎を拡大して歯列を広げる
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下顎の位置を適切に誘導する
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舌のスペースを確保する
といった結果として、呼吸環境が改善する可能性はあります。
特に成長期のお子さんでは、顎の発育誘導が将来的な気道形成に影響することも考えられています。
注意点:医科との連携が重要

もし、
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強いいびき
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睡眠中の無呼吸
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日中の強い眠気
といった症状がある場合は、まず医科での検査が優先です。
矯正歯科は「歯列・顎・口腔機能」の専門です。睡眠障害そのものの診断や治療は医科領域になります。
大切なのは、包括的な視点です。
歯並びだけを見るのではなく、
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呼吸
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舌の位置
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口唇閉鎖
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姿勢
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顎の発育
まで含めて評価することが重要です。
まとめ
歯並びと睡眠の質は、無関係とは言い切れません。
歯並びは、
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舌の位置
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顎の大きさ
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気道の広さ
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呼吸様式
とつながっています。
「歯並びが気になる」という相談の裏に、実は呼吸や睡眠の問題が隠れていることもあります。
矯正治療は見た目を整えるだけでなく、口腔機能を整える医療でもあります。
睡眠の質が気になる方は、歯並びの状態も一度確認してみると、何か変化があるかもしれません。
矯正治療をお考えの方は、是非一度ご相談ください
下記LINEよりお問い合わせいただけます!」
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日本睡眠学会 編『睡眠学』朝倉書店
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日本矯正歯科学会 編『歯科矯正学』医歯薬出版
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Guilleminault C, et al. “Sleep-disordered breathing and orthodontics.”
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Katyal V, et al. “Pediatric sleep-disordered breathing and craniofacial morphology.”