近年、目立ちにくく取り外しができる矯正治療として、マウスピース矯正を選択する方が増えています。仕事やプライベートで人と会う機会が多い方にとって、ワイヤー矯正よりも見た目の負担が少ないことは大きな魅力です。
しかし、カウンセリングの際によくいただく質問のひとつが、
「飲み会が多いのですが、マウスピース矯正はできますか?」「お酒を飲む機会が多い人には向いていないのでしょうか?」
というものです。
結論からいうと、飲み会が多いからといって必ずしもマウスピース矯正ができないわけではありません。ただし、マウスピース矯正は患者さん自身の自己管理が治療結果に大きく影響するため、飲酒の頻度や生活習慣によっては注意が必要です。
今回は、飲み会が多い方とマウスピース矯正の相性、治療を成功させるためのポイントについて詳しく解説します。
マウスピース矯正の基本ルール

マウスピース矯正では、透明な装置を歯に装着し、少しずつ歯を移動させていきます。
治療を成功させるためには、一般的に1日20〜22時間以上の装着が必要とされています。
つまり、外してよい時間は1日2〜4時間程度です。
外すタイミングは主に以下の場面です。
- 食事
- 間食
- 飲酒(基本的には水以外)
- 歯磨きや口腔ケア
この装着時間を守れないと、歯の移動が予定どおり進まず、
- 治療期間の延長
- マウスピースの不適合
- 追加アライナーの作製
- 治療計画の修正
などのリスクが高まります。
なぜ飲み会が多いと注意が必要なのか?
① 装着時間が不足しやすい
最も大きな問題は装着時間の不足です。
例えば18時から23時まで飲み会が続いた場合、5時間近くマウスピースを外した状態になります。
さらに、
- 二次会
- 三次会
- カラオケ
- 深夜の食事
などが加わると、半日近く装置を装着できないケースもあります。
週に数回こうした状態が続くと、必要な装着時間を大幅に下回る可能性があります。
マウスピース矯正は「毎日少しずつ歯を動かす治療」です。
数日単位では問題なくても、長期間にわたり装着不足が続くと治療精度に影響が出やすくなります。
② 飲酒中は再装着を忘れやすい
飲み会後の失態で一番多いのは「装着するのを忘れて寝てしまった」
これが一番多いです。
歯磨きをしてそのまま寝てしまうこともありますよね。1回程度なら大きな問題にならない場合もありますが、頻繁に繰り返すと歯の移動に悪影響を及ぼしますので注意が必要です。
③ 紛失リスクが高くなる
飲み会の席ではマウスピースを外す機会が増えます。
その際マウスピースは
- 紙ナプキンに包む
- ティッシュにくるむ
- テーブルに置く
このどれかが一番多いかと思うのですが、これは紛失の原因につながります。
実際に矯正治療中のトラブルとして多いのが「外食先での紛失」です。
新しいマウスピースの再製作には費用や時間がかかる場合があります。
そのため、外出時には必ず専用ケースを持ち歩くことが重要です。
マウスピースを装着したままお酒を飲んでもいい?
基本的にはおすすめできません。
マウスピースを装着したまま飲んでよいものは基本的には水のみです。
それ以外の飲み物にはさまざまなリスクがあります。
着色のリスク
- 赤ワイン
- ハイボール
- ウイスキー
- カクテル
- ビール
など色のついている飲み物は、マウスピースの変色を招く可能性があります。
またアルコールだけではなく、お茶やコーヒー紅茶も着色の原因となります。透明な装置が黄ばんだり着色したりすると、見た目が悪くなるだけでなく清潔感も損なわれます。
ただし、1回飲んだからすぐに色がつくわけではありません。
何回か回数を重ねることで徐々に色がついていくようになります。
むし歯リスクの上昇
アルコール飲料には糖分を含むものも少なくありません。
マウスピースを装着したまま飲むと、糖分が歯と装置の間に停滞しやすくなります。
結果として、
- むし歯
- 歯周病
- 口臭
のリスクが高まります。
マウスピースの変形
マウスピースを装着したまま熱い飲み物を飲んだ場合、マウスピースが変形する可能性があります。
変形すると歯に正しく力が加わらなくなり、治療計画に影響を与えることがあります。
飲み会が多い人でもマウスピース矯正を成功させるコツ

① 飲み会以外の時間は徹底して装着する
週に1〜2回程度の飲み会であれば、その他の時間にしっかり装着することで十分対応できる場合があります。
大切なのは、
「外している時間を最小限にする」
という意識です。
食事や飲酒が終わったらできるだけ早く再装着しましょう。
② 飲み会前後の口腔ケアを徹底する
理想は飲み会終了後に歯磨きを行い、その後マウスピースを装着することです。
難しい場合は、
- 水でうがいする
- デンタルフロスを使用する
- 携帯用歯ブラシを持参する
などの工夫が有効です。
③ 専用ケースを必ず携帯する
紛失防止のため、
- ポケットに直接入れない
- ティッシュに包まない
- テーブルに放置しない
ことが大切です。
外したらすぐケースに入れる習慣をつけましょう
④ アプリやアラームを活用する
飲酒後は再装着を忘れやすいため、
- スマートフォンのアラーム
- 矯正管理アプリ
- リマインダー機能
を利用するのもおすすめです。
自己管理をサポートする仕組みを作ることで、装着時間を確保しやすくなります。
飲み会が非常に多い人はワイヤー矯正の方が向いている場合も
職業によっては、
- 営業職
- 接待の多い仕事
- イベント業界
- 飲食業界
- 経営者
など、飲酒や会食の機会が非常に多い方もいます。
週に何度も長時間の飲み会があり、装着時間の確保が難しい場合は、固定式のワイヤー矯正の方が適していることもあります。
ワイヤー矯正は患者さん自身が取り外せないため、装着時間を気にする必要がありません。
ただし、
- 見た目
- 痛み
- 清掃性
などの違いもあるため、どちらが適しているかは個人のライフスタイルによって異なります。
治療方法を選ぶ際には、仕事や生活習慣を歯科医師へ正直に伝えることが重要です。
まとめ
飲み会が多いからといって、マウスピース矯正ができないわけではありません。
しかし、マウスピース矯正は1日20〜22時間以上の装着が必要であり、飲み会の頻度や時間によっては治療計画に影響が出る可能性があります。
成功のポイントは、
- 装着時間をしっかり守る
- 飲酒後は早めに再装着する
- 専用ケースで管理する
- 口腔ケアを徹底する
ことです。
一方で、接待や会食が非常に多く、自己管理が難しい方はワイヤー矯正の方が適している場合もあります。
矯正治療で最も大切なのは、ご自身のライフスタイルに合った方法を選択することです。
マウスピース矯正を検討している方は、飲み会の頻度や生活習慣も含めて歯科医師に相談し、自分に合った治療法を選びましょう。
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参考文献
- American Association of Orthodontists (AAO). Invisalign and Clear Aligner Therapy Information.
- British Orthodontic Society. Patient Information on Clear Aligners.
- Rossini G, Parrini S, Castroflorio T, Deregibus A, Debernardi CL. Efficacy of clear aligners in controlling orthodontic tooth movement: A systematic review. Angle Orthodontist. 2015;85(5):881-889.
- Papadimitriou A, Mousoulea S, Gkantidis N, Kloukos D. Clinical effectiveness of Invisalign orthodontic treatment: A systematic review. Progress in Orthodontics. 2018;19(1):37.
- 厚生労働省. 歯科口腔保健に関する情報.
- 日本矯正歯科学会. 矯正歯科治療に関するガイドライン.