矯正治療を始める際、多くの患者さんが気にすることの一つが「歯を抜くか、抜かないか」です。
近年では「できるだけ歯を抜かない矯正治療」を希望される方が増えており、非抜歯矯正を選択されるケースも少なくありません。
しかし治療が進んでいく中で、
- 思ったより歯並びが改善しない
- 口元の突出感が気になる
- 横顔をもっとすっきりさせたい
- インターネットで抜歯矯正の症例を見て気持ちが変わった
などの理由から、「やっぱり抜歯した方がいいのでは?」と考える方もいらっしゃいます。
では、非抜歯矯正を始めた後に、途中から抜歯矯正へ変更することは可能なのでしょうか?
今回はその疑問について詳しく解説します。
途中から抜歯矯正へ変更はできる

結論から言えば、
非抜歯で矯正を開始しても、途中から抜歯治療へ変更することは可能です。
ただし、すべての症例で簡単に変更できるわけではありません。
治療がどこまで進んでいるかや、歯の移動量、使用している装置によって治療計画は大きく変わります。
そのため、担当医と十分に相談し、現在の状況を再評価したうえで判断することが大切です。
なぜ途中で抜歯が必要になることがあるの?
① 思ったほどスペースが足りなかった
非抜歯矯正では、歯列を広げたり奥歯を後方へ移動させたりしてスペースを作ります。
しかし実際に歯を動かしてみると、
- 予定よりスペースが確保できない
- 歯の大きさが予想以上だった
- 歯の傾きが強い
などにより、十分なスペースが得られない場合があります。
その結果、抜歯へ治療方針を変更することがあります。
② 口元の突出感を改善したい

歯並びは整っても、
「口元が前に出ている感じが残る」
というケースがあります。
非抜歯では歯を後方へ大きく移動させることに限界があります。
そのため、
- Eラインを整えたい
- 横顔を改善したい
- 口ゴボを改善したい
という希望が強くなった場合には、抜歯を選択することがあります。
③ 治療途中で希望が変わった
矯正治療は2〜3年ほどかかることもあります。
その間に、
- SNSで症例を見る
- 家族や友人の治療結果を見る
- 美容意識が変化する
などによって希望が変わることは珍しくありません。
そのため途中で治療方針を見直すケースもあります。
途中で抜歯すると治療期間は延びる?
多くの場合、
治療期間は延長する可能性があります。
理由は、
- 抜歯を行う
- 抜歯スペースを閉じる
- 歯の移動方向を変更する
という追加の治療が必要になるためです。
平均すると数か月から1年程度延びることもありますが、症例によって大きく異なります。
費用は追加になる?

医院によって異なります。
追加費用として考えられるものは、
- 抜歯費用
- 再診断料
- 治療計画変更料
- 装置の追加・交換費用
などがあります。
一方で、治療費が総額制の場合は追加料金が発生しないこともあります。
契約内容を確認しておきましょう。
マウスピース矯正でも変更できる?
マウスピース矯正でも可能です。
ただし、
抜歯を行うと歯の動かし方が大きく変わるため、
新しい歯型の採得
↓
再シミュレーション
↓
新しいアライナー作製
が必要になります。
そのため治療計画を一から作り直す場合もあります。
抜歯へ変更した方が良いケース
以下のような場合は抜歯が適している可能性があります。
- 重度の叢生(ガタガタ)がある
- 前歯が大きく前に出ている
- 口元の突出感を改善したい
- 出っ歯を大きく改善したい
- 噛み合わせの改善に抜歯が有利と判断された
もちろん、すべての患者さんに当てはまるわけではありません。
逆に途中で抜歯しない方が良いケース
以下のような場合は、そのまま非抜歯で進める方が良いこともあります。
- すでに歯の移動がかなり進んでいる
- 十分なスペースが確保できている
- 口元の改善が期待できる
- 抜歯によるメリットが少ない
途中変更によるデメリットが大きい場合には、非抜歯を継続する方が望ましいこともあります。
治療計画は途中で見直すことも大切

矯正治療は、治療開始時に立てた計画どおりに進むことが理想です。
しかし、人それぞれ歯の動き方には個人差があります。
予定どおりに進まないこともあれば、予想以上に順調に進むこともあります。
そのため、定期的に治療経過を確認しながら必要に応じて治療計画を修正していくことは決して珍しいことではありません。
大切なのは、「非抜歯だから最後まで絶対に非抜歯」と考えるのではなく、その時点で最も良い方法を選択することです。
まとめ
非抜歯で矯正治療を始めた後でも、途中から抜歯矯正へ変更できる場合があります。
ただし、治療の進行状況や歯並び、噛み合わせ、患者さんの希望などを総合的に判断する必要があります。
途中変更には治療期間の延長や追加費用が発生する可能性もあるため、自己判断で決めるのではなく、担当の矯正歯科医と十分に相談することが重要です。
矯正治療は一人ひとりのお口の状態に合わせたオーダーメイドの治療です。
治療中に疑問や希望の変化があれば遠慮なく相談し、納得したうえで治療を進めていきましょう。
参考文献
- 日本矯正歯科学会. 矯正歯科治療Q&A.
- Proffit WR, Fields HW, Larson B, Sarver DM. Contemporary Orthodontics. 6th ed. Elsevier; 2018.
- Graber LW, Vanarsdall RL, Vig KWL. Orthodontics: Current Principles and Techniques. 6th ed. Elsevier; 2017.
- Ackerman JL, Proffit WR. Soft tissue limitations in orthodontics. Angle Orthodontist. 1997.
- 厚生労働省 e-ヘルスネット「歯と口腔の健康」に関する資料.