近年、矯正治療はお子さまだけでなく、大人になってから始める方も増えています。
「歯並びをきれいにしたい」
「口元に自信を持ちたい」
「噛み合わせを改善したい」
など、さまざまな理由で矯正相談に来院される患者さまがいらっしゃいます。
矯正治療には見た目の改善だけでなく、歯磨きがしやすくなる、噛み合わせが整うなど多くのメリットがあります。しかし、治療を始める前に知っておいていただきたいデメリットや注意点もあります。
私たち歯科衛生士は、矯正治療中の患者さまと定期的に関わる機会が多く、日々さまざまなお悩みをお聞きしています。
今回は歯科衛生士の視点から、矯正治療を始める前に知っておきたいデメリットと、その対策についてご紹介します。
矯正治療中は歯磨きが難しくなる

最もお伝えしたいのが、矯正治療中のセルフケアについてです。
特にワイヤー矯正では、歯に装置が付くことで普段よりも歯磨きが難しくなります。
ブラケットやワイヤーの周囲には汚れが溜まりやすく、
- 歯と装置の境目
- ワイヤーの下
- 奥歯の周辺
などは磨き残しが起こりやすい場所です。
磨き残しが続くと、
- 虫歯
- 歯肉炎
- 歯周病
のリスクが高まります。
実際に矯正治療中に虫歯ができてしまい、矯正治療を一時中断しなければならないケースもあります。
矯正治療を成功させるためには、歯並びだけでなくお口の健康を維持することも大切です。
装置を付けた直後は痛みや違和感があることも
矯正治療では歯を少しずつ動かしていきます。
そのため、装置を装着した直後や調整後には痛みや違和感を感じることがあります。
患者さまからよく聞くお声として、
- 前歯で噛みにくい
- 歯が浮いたような感じがする
- 食事がしづらい
などがあります。
初めて経験する痛みに不安を感じる方もいらっしゃいますが、多くの場合は数日から1週間程度で徐々に慣れていきます。
治療開始直後は、
- スープ
- おかゆ
- うどん
- 豆腐
- ヨーグルト
など柔らかい食事を選ぶと負担を軽減できます。
食事のたびに気を使う場面が増える

矯正装置を付けると、これまで通りの食生活が少し難しくなることがあります。
特にワイヤー矯正では、
- ガム
- キャラメル
- お餅
- 硬いせんべい
- フランスパン
などの粘着性のある食べ物や硬い食品によっては装置が外れたり変形したりする可能性があります。
また、装置の周囲に食べ物が挟まりやすくなるため、人前での食事が気になるという患者さまも少なくありません。
最初は不便に感じるかもしれませんが、多くの方は徐々にコツをつかみ、普段通りの食生活に近づいていきます。
マウスピース矯正は自己管理が重要

最近は目立ちにくいマウスピース矯正を希望される方が増えています。
しかし、歯科衛生士として感じるのは、マウスピース矯正は患者さま自身の協力が非常に重要だということです。
マウスピースは基本的に1日20〜22時間以上の装着が推奨されています。
装着時間が不足すると、
- 歯が予定通り動かない
- 治療期間が延びる
- マウスピースが合わなくなる
といった問題が起こることがあります。
成功している患者さまほど、装着時間やお口のケアをしっかり管理されている印象があります。
目立ちにくく取り外しができることは大きなメリットですが、その分、自己管理が大切になります。
口内炎や粘膜の痛みが出ることがある
矯正装置に慣れるまでは、頬や唇の内側に装置が当たり、口内炎ができることがあります。
特に治療開始直後は、
- 頬の内側
- 唇の裏側
- 舌の周辺
などに違和感が出やすくなります。
患者さまからも、
「装置が当たって痛い」
「口内炎ができた」
というご相談をいただくことがあります。
多くの場合はお口の粘膜が慣れることで改善していきます。
必要に応じて矯正用ワックスを使用することで、刺激を軽減することもできます。
気になる症状がある場合は、我慢せずに歯科医院へ相談しましょう。
定期的な通院が必要になる
矯正治療は装置を付けたら終わりではありません。
安全に歯を動かすためには定期的な通院が必要です。
通院時には、
- 歯の動きの確認
- 装置の調整
- 虫歯チェック
- 歯周病チェック
- クリーニング
などを行います。
お仕事や学校などで忙しい方にとっては、定期的な通院が負担になることもあります。
しかし、この管理をしっかり行うことで治療のトラブルを防ぎ、スムーズな治療につながります。
治療後もリテーナーの使用が必要
矯正治療が終了すると、
「これで終わり!」と思われる方もいらっしゃいます。
しかし、実は治療後も重要な期間があります。
歯は元の位置へ戻ろうとする性質があり、これを「後戻り」といいます。
後戻りを防ぐためには、
- リテーナー(保定装置)の使用
- 定期的な経過観察
が必要になります。
歯は思っているよりすぐに戻ります。個人差がありますが、早い方だと1ヶ月ほどで戻ります。
デメリットがあっても矯正治療をして良かったという声は多い
ここまで矯正治療のデメリットについてお話ししてきました。
しかし、治療を終えた患者さまからは、
「もっと早く始めれば良かった」
「笑顔に自信が持てるようになった」
「歯磨きがしやすくなった」
「写真を撮るのが楽しくなった」
というお声をいただくことがたくさんあります。
歯並びや噛み合わせが改善されることで、お口の健康だけでなく気持ちの面でも大きな変化を感じる方が多いようです。
まとめ
矯正治療には、
- 歯磨きが難しくなる
- 痛みや違和感がある
- 食事に気を使う必要がある
- 自己管理が必要になる
- 口内炎ができることがある
- 定期通院が必要
- 治療後も保定が必要
といったデメリットがあります。
しかし、これらの多くは適切なケアや定期的な管理によって軽減できます。
私たち歯科衛生士は、患者さまが安心して矯正治療を続けられるようサポートしています。
矯正治療を検討されている方は、不安なことや疑問があればお気軽にご相談ください。
ご自身に合った治療方法を選び、健康的で美しい歯並びを目指していきましょう。
参考文献
- 日本矯正歯科学会『矯正歯科治療について』
- 日本臨床矯正歯科医会『矯正治療Q&A』
- 厚生労働省『医療広告ガイドライン』
- Contemporary Orthodontics, Proffit WR, Fields HW, Larson B, Sarver DM.
- American Association of Orthodontists Orthodontic Health Information.