マウスピース矯正はなぜ何回も型の取り直しをするのか?

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マウスピース矯正はなぜ何回も型の取り直しをするのか?

マウスピース矯正を始めた患者さまからよくいただく質問があります。

「最初に歯型を取ったのに、なぜまた型取りをするのですか?」
「何回もスキャンするということは治療が失敗しているのですか?」

実は、マウスピース矯正で何度も型取りや口腔内スキャンを行うことは珍しいことではありません。むしろ、より精密な治療結果を得るために重要な工程のひとつです。

今回は、マウスピース矯正で何度も型取りを行う理由について詳しく解説します。


マウスピース矯正は最初の計画だけで100%完成する治療ではない

まず知っていただきたいのは、マウスピース矯正は最初に作製したマウスピースだけで理想的な歯並びを100%完成させる治療ではないということです。

治療開始時には口腔内スキャナーや歯型をもとに現在の歯並びをデジタル化し、コンピューター上で歯の移動計画を作成します。

しかし、コンピューター上で予測した歯の動きと、実際の口の中で起こる歯の移動は完全には一致しません。

なぜなら、

・骨の硬さ
・歯根の形
・噛み合わせ
・年齢
・筋肉の力
・マウスピースの装着状況

など、患者さまごとに条件が異なるからです。

例えばシミュレーションでは2mm歯を動かす予定でも、実際には1.5mmしか動いていないことがあります。

わずかな差に感じるかもしれませんが、矯正治療では0.5mmの誤差でも仕上がりに大きく影響します。

そのため、最初のマウスピースで80~90%程度まで歯を動かし、その後に再スキャンを行い、現在の歯並びに合わせて新しいマウスピースを作製しながら95%、そして100%へ近づけていくのです。

つまりマウスピース矯正は、

「一度作った装置で最後まで治療する方法」

ではなく、

「途中で何度も現在地を確認しながら理想の歯並びへ導いていく治療」

と考えると分かりやすいでしょう。

カーナビで目的地まで向かう際に、途中で現在地を確認しながらルート修正するのと同じようなイメージです。

 


理由① 歯はシミュレーション通りには動かないから

マウスピース矯正では治療開始時に精密なシミュレーションを行います。

しかし実際には歯の動きには個人差があります。

特に、

・歯の回転
・歯の挺出
・抜歯スペースの閉鎖
・奥歯の移動

などは予測通りに進まないこともあります。

そのため治療途中で現在の歯並びを再評価し、新たな治療計画を立て直す必要があります。

 


理由② マウスピースの装着時間が不足することがあるから

マウスピース矯正は患者さま自身が管理する治療です。

一般的には1日20~22時間以上の装着が推奨されています。

しかし、

・食後に付け忘れる
・旅行中に装着できない
・仕事中に外したままになる
・紛失する

といったことも起こります。

装着時間が不足すると歯の移動が予定より遅れます。

その結果、後半のマウスピースが合わなくなり、再スキャンが必要になります。

 


理由③ 噛み合わせを調整するため

矯正治療は歯並びだけを整える治療ではありません。

見た目がきれいでも、

・奥歯がしっかり噛めない
・左右で噛み合わせが違う
・前歯だけが強く当たる

といった状態では良い治療結果とはいえません。

治療途中で噛み合わせを確認し、必要に応じて歯の移動計画を修正するために再スキャンを行います。

 


理由④ アタッチメントの効果を見直すため

マウスピース矯正では歯の表面に小さな突起を付けることがあります。

これをアタッチメントと呼びます。

アタッチメントは、

・歯を回転させる
・歯を引き上げる
・歯を移動させる

などの働きを助けます。

しかし実際の歯の動きを確認すると、当初の計画とは異なる追加の動きが必要になる場合があります。

その際にはアタッチメントの位置や形状を変更するため、新たなスキャンを行います。

 


理由⑤ 抜歯症例は特に再スキャンが必要になりやすい



抜歯を伴う矯正治療では歯を大きく動かす必要があります。

特に、

・前歯を後方へ下げる
・犬歯を移動させる
・抜歯スペースを閉じる

といった動きは難易度が高くなります。

そのため予測誤差も大きくなりやすく、途中で何度か治療計画を修正することが一般的です。

 


理由⑥ リファインメントでさらに完成度を高めるため

マウスピース矯正では治療終盤にリファインメントを行うことがあります。

リファインメントとは追加矯正のことです。

例えば、

・あと少しだけ歯を動かしたい
・歯の向きを微調整したい
・噛み合わせをさらに改善したい

といった場合に行います。

これは治療の失敗ではありません。

むしろ、より完成度の高い歯並びを目指すための仕上げ工程です。

多くのマウスピース矯正治療ではリファインメントが行われています。

 


型取りが多いのは治療が失敗しているから?

患者さまの中には、

「何回も型取りするのは失敗しているからでは?」

と不安になる方もいます。

しかし実際には逆の場合もあります。

現在のマウスピース矯正は、途中で歯の状態を確認しながら細かく調整することで治療精度を高める考え方が主流です。

そのため再スキャンの提案を受けたからといって、必ずしも治療が失敗しているわけではありません。

むしろ理想的な仕上がりを目指して丁寧に調整している証拠ともいえます。

 


患者さまが再スキャンを減らすためにできること

再スキャンを完全に避けることは難しいですが、回数を減らせる可能性はあります。

装着時間を守る

1日20~22時間以上の装着を継続しましょう。

交換時期を守る

自己判断で交換日を変更しないことが大切です。

定期通院を欠かさない

問題を早期発見できれば大きなズレを防げます。

ゴムかけをしっかり行う

顎間ゴムを使用する症例では治療結果に大きく影響します。

 


まとめ

マウスピース矯正で何回も型取りや口腔内スキャンを行うのは、治療がうまくいっていないからではありません。

むしろ、

・歯の移動状況を正確に把握するため
・治療計画を修正するため
・噛み合わせを改善するため
・治療精度を高めるため
・理想的な歯並びに近づけるため

に必要な工程です。

マウスピース矯正は最初のマウスピースだけで100%の結果を目指す治療ではありません。

まず80~90%まで歯を動かし、その後に再スキャンを行いながら95%、そして100%へ近づけていく治療です。

そのため、治療途中で型取りや口腔内スキャンを提案された場合は、「やり直し」ではなく「より良い結果を目指すためのアップデート」と考えていただくとよいでしょう。

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参考文献

  1. Align Technology. Invisalign Clinical Protocols and Treatment Planning Guidelines.
  2. Kravitz ND, Kusnoto B, BeGole E, Obrez A, Agran B. How well does Invisalign work? Am J Orthod Dentofacial Orthop. 2009.
  3. Rossini G, Parrini S, Castroflorio T, Deregibus A, Debernardi CL. Efficacy of clear aligners in controlling orthodontic tooth movement. Angle Orthod. 2015.
  4. Papadimitriou A, Mousoulea S, Gkantidis N, Kloukos D. Clinical effectiveness of Invisalign orthodontic treatment. Prog Orthod. 2018.
  5. 日本矯正歯科学会 矯正歯科治療ガイドライン
  6. 厚生労働省 歯科矯正治療に関する情報提供資料